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海はあちらですか

読んだ本のこと、仕事のこと、ふと思ったことを思うままに書いてみたいと思います。自分の記録と整理のために。

【読了】裏山の奇人 野にたゆたう博物学

これはすごく面白かった!
こないだもフライングで書いたけど、あらためて感想を。
 
これを読んで一番強く驚いたのは、「生き物の密度ってすごい」ってこと。もう隙間無く、ありとあらゆる関係を結んでぎっしり詰まっているイメージ。何気ない風景をそんな風に見たことこれまでなかった。
 
著者は好蟻性生物の研究者。読むまでは好蟻性生物って存在をそもそも知らなかった。まずひとくちに蟻と言っても、その種類はすごく多くてすごく多様。その蟻に対して、本当にありとあらゆる種類の昆虫、クモ、鳥、植物などなどが強い関係を持って生きている。お互いに利用しあったり、一方的に奪ったり様々だけど、その関係を最大限活用するために自分を変えて進化してきた生き物たち。その専門性と多様性にまずびっくり。
 
そしてそんな生き物同士が密接に関わり合って、日本のふとしした日常の足元や裏山でもものすごい複雑なやりとりを繰り広げていること!いやぁ、知らなかった!
 
むかし、あるNPOの活動に参加する機会があって言われて印象的だったこと。ビオトープに関する話だったんだけど、生き物の居場所が無いから作ってあげる、という目線で見るのはもったいない。驚くべきことは、ちょっとでも活用できる環境があれば、すかさず生き物が訪れることのすごさ。そのしたたかさと柔軟さ。それがすごいと思わないか、と。その時は本当にそうだ!って目からウロコだったけど、今回本を読んであらためて思った。生き物はそれくらい強くて、充満しているんだ。
 
ちなみにこの本でも書かれていたけど、既存の生態系が充実していて、生き物が充満していれば外来種は入らないとのこと。入る隙間がないから。隙間を作ってしまったことが問題を具体化させてしまったようだ。なるほど。
 
話は戻るけど、風景を見たときに持っていた密度の認識が間違っていたんだと知った。見えないものは無いように思っていたら全くちがった。自分が見てないだけでそこにはぎっしりと生き物同士のやり取りがある。さらにこれを細菌まで広げると世界に隙間は全く無いのかも。風景の認識ががらっと変わるよ。
 
あと時間の長さ。あんなに複雑な共生関係のための進化には長い時間がかかる。あらためて自然の時間軸の長さを感じる。なおかつ、その中でハイペースに繰り返される世代交代。変わらず永続しているように見えて、常に壊したハナから作って、死んで生まれて、進化して、を絶え間なく繰り返している。一瞬も止まらない。自然界に対してもっとそういう流動的な大きなイメージを持つのが正しいのかも。
 
もうひとつ、ついでに思ったのは、今都会では人間が優先種だけど、常に競争にさらされているんだなぁ、ということ。人口が減って人が老いたら他の生き物が押し寄せてくる。そうやってうねっているのものなんだ。持続可能って言われるけど、持続性が高いことと永続的なことはまた別で、この世界に可逆的なものや永続的なものはない。時間軸は一方向にしか進まないし常に世界は変わり続けている。
 
なんか大げさだけど、ふとそんな視点を得た本でした。あと、著者がめっぽういいヤツで、普通に文章おもしろいし、彼の自然に対する姿勢、学問に対する姿勢もとてもステキだ。ぜひ話の続きを聞いてみたい。
 
こういう学問がちゃんと評価され、大切にされるといいなぁ。子供ごころを思い出した最近のターニングポイント的な本でした。自分のわくわくする気持ちをもっと大切にしよっと。